大学に入学して少し経った頃。あまり買い食いもしたことがない、友人と遊ぶ経験がないという、高校時代は毎日部活と家の往復だったわたしが、大学で出来た友人に誘われ、なんと「宅飲み」というのを体験したのは、自分の中で大きなニュースだった。
しかも、「ピザパ」をするというのだ。三大パーティ、タコパ、鍋パ、そしてピザパ。18歳を少し過ぎたわたしに、さっそく甘い体験が待っていたのだ。普段、お母さんと2人で食べるだけだったからな、お父さんが出張中のときだけのお楽しみだった。Mサイズ1枚でお腹がいっぱいになるから、種類もそんなに楽しめないし。ハーフ&ハーフやクオーターといったメニューはそんな欲を満たしてくれたけど。
何が良いかな?テリマヨチキンは美味しいけどちょっと飽きるし、そうなるとクオーターかな。バスターズやビンゴ、でも最近話題になっているエビマヨも気になる。チラシを友人が持ってきた。そして、口にしたセリフに一瞬、何を言っているかわからず、思考が停止した。
[広告]
「どこのピザにする?」
彼は「何(What)のピザにするか」聞いたのではなかった、「どこ(Where≒Which)」。究極の選択肢に、前置きがあったのか?そして彼が持ってきたチラシにまた目を見開いた。1枚じゃなかったのだ。彼の手の中には4枚ほど、異なる店舗のチラシがあったのだ。
これまで、地元は地域の中でも辺境で、役所などの中心部に行くより、ちょっと歩けば別の町の区域に入るようなところだったのだが、ピザはピザーラ一択だったのだ。そうなると、「ピザ=ピザーラ」の図式が完成しきっていた。それは完全な方程式だったのだ。それなのに。
「あ~ピザハット、最近食べてないなぁ」「ドミノの四角いピザ美味しいよね」そんな会話にわかってるふりをして無理やり話題を合わせた。でも、何一つわからない。物心ついたときからわたしの舌にはピザーラの味しかなかったんだもの。地元を出るってこんなに甘酸っぱかったんだね。
みんなでつつくピザは美味しかった。知らないトッピング、知らない生地カット。友人たちが気づかないところで、一つ、大人の階段を上がったわたしだった。今、東京に住んでいると、ナポリの窯や、Salvatore Cuomoなど、聞いたことが無いおシャンなピザ屋さんもチラシが入ってくる。ウーバーイーツもあるし、ほとんどの地域のレストランが家で味わえてしまうのだが、未だにわたしの中でピザといえば、ピザーラなのだ。そこだけは、地元の記憶として、譲れない。
-Fin.-
[広告]
ピザーラのことしか書いていないので、スポンサーのピザハットさんのことについても書かなくてはならない。
やはり、あれから10年ほど経過して、自分の地元も結構変わった。大きな商業施設も増えたし、将来は田舎の名誉ある象徴のイオンモールの話も出ているらしい。やはり、ピザチェーンを調べたが、自分の地域をカバーしてくれるものが増えていた。大体越境なんだけど。
そして肝心のピザハットさんであるが、
もうちょっと頑張ってくれませんかね?